2020年、コロナ禍が世界を席巻し、収束したかにみえたウイルスも昨年末より第二波として猛威をふるい、ついに2021年、年が明けた1月8日、首都圏東京、千葉、埼玉、神奈川に対し緊急事態宣言が再発令されました。多くの創業事業者が事業の撤退を余儀なくされる中、お陰様で事業が存続できていることは感謝の一語に尽きます。これからも社会への貢献、お客様の成功とこれからの時代を担う若い人財の応援に努めて参ります。
さて、創業どころではない、との声も聞こえてきそうですが、ピンチはチャンスでもあります。これから創業を目指す方の参考になれば幸いです。また個人的な備忘録も兼ねて創業までの記録を続けて参りたいと思います。前回までは、会計帳簿、税理士の選定ポイントをご紹介して参りました。ここからは会社設立に向けて話しを進めてまいります。
会社勤めをやめて創業するもよし、副業のために会社を興すのも良し。さて、事業の受け皿である事業体を法人化するか、もしくは手っ取り早く個人事業主としてスタートするか、よくよく検討の上、決定する必要があります。
法人化のメリットはいろいろとありますが、法人化する最大のメリットは大手企業とも法人として直接取引ができる点にあります。個人事業主の場合は法人格がないため、取引先と直接「委託契約」を個人で結ぶのは難しいのが実情です。なお、法人化した場合は事業収支が赤字であっても法人住民税などを納める必要がある点など留意するポイントもございますので、税理士と相談の上、自分にあった創業モデルを決定することをお勧めします。
さて、ここからは株式会社設立を前提に、会社設立までのおおまかなプロセスをご説明します。会社設立にあたり、以下の点を事前に決定します。
・会社名を決める
・事業目的を整理する
・資本金を決める
・出資者を募る(株主構成が決まる)
・役員を決める
・所在地を決める
また、法人登記として以下を決定します。
・設立日
・決算月
・発行株式総数
・役員任期
以上が決まると、定款が作成できます。定款ができましたら、以下の手続きを進めます。
・定款を認証する
・出資金を自身の銀行口座へ入金する(出資金額証明用に預金通帳のコピーを取るため)
・登記書類を準備する
・法務局で法人設立登記を行う
・法人登記完了後、税務署および都道府県への開業届を提出する(青色申告も忘れずに)
これで、法人設立が完了しますが、法人登記完了後に以下の手続きを進めます。
・銀行口座を開設する(法人登記簿の添付が必要)
・創業融資を申請する(法人登記簿の添付が必要)
それでは、法人登記に向けた具体的な実施内容をご紹介します。
(1)会社名を決める
会社名候補はいくつか決めておりました。会社名を決定するのにつけた前提条件はただひとつ、命名する会社名でインターネットドメインが取得できる事、と決めていました。また、ドメインはドットコム(.com)もしくはシーオージェーピー(.co.jp)のいずれか、可能であれば両方を取得できる事、と制約条件をつけました。
当初決めていた社名候補は既にドメインが取られているなど、会社名決定までは相当の時間を費やしました。類似社名有無やドメインの検索には以下のサイトの利用が便利です。
・法人名検索:国税庁検索サイト
・ドメイン検索&登録:お名前ドットコム®
会社名は本店登記所在地に同一の社名があった場合でも、事業目的が異なれば認められますが、命名する社名に深いこだわりや思い入れがない限り、すでに登録済の社名は避けたほうが良いでしょう。
(2)本店登記場所を決める
会社設立にあたり、定款に本店所在地を定める必要があります。登記後に本店所在地を変更する場合は、変更登記(本店移転登記)が必要になります。店舗やオフィスが不要の場合は、自宅を本店所在地にすることもできます。シェアオフィスや住所だけレンタルできるバーチャルオフィスで本店所在地登記が可能なサービスもありますので、自分の事業モデルにあわせて本店所在地を決定することをお勧めします。
シェアオフィスやバーチャルオフィスは、自宅を会社登記にしたくない場合や、都心の一等地を本店所在地として利用するメリットがありますが、法人口座を銀行へ開設する際に断られる場合がありますので注意が必要です。あらかじめ取引口座を開設したい金融機関へ事前に相談することをおすすめいたします。
参考までに私の場合は創業時点ではオフィスを借りる必要がなかったことと、横浜市の創業支援制度の活用を考えておりましたので、自宅をそのまま本店所在地としました。自宅を本店所在地としたことで、30年来の付き合いがある地元の三井住友銀行への口座開設と、当該銀行を介して法人クレジットカードの開設がスムーズにかつスピーディに行うことができたのが大きなメリットでした。
(3)事業目的を決める
定款には事業目的を記載する欄があります。これから立ち上げる主たる事業はもとより、将来の新規事業もふくめて記載しておくことをお勧めします。また多くとも10種類に絞るのが良いとされています。
(4)資本金を決める
資本金を決めるにあたり、創業後に自己資本で最低半年間は事業が賄える規模を目標としました。現在、株式会社は資本金1円で設立できますが、創業融資や事業を営む上での信用を鑑みますと、従来あった有限会社設立時の最低資本金300万円が目安と考えます。
当社のケースでは自己資本400万円と創業融資の400万円を加えた総資産800万円とし、キャッシュフローを重視した経営をめざしました。
(5)出資者を募る
事業設立にあたり、複数の方と共同出資のかたちをとって会社を設立するケースがあります。この場合、経営権を明確にするためにも出資比率を考慮する必要があります。社長を担うかたが50%超を保有するのがベストと言われています。ご自身の資金で賄えるのであれば100%を保有することをお勧めします。株主総会を含めてシンプルな経営が可能になります。
(6)取締役の任期を決める
役員の任期は2年から10年の範囲で設定します。任期2年の場合、役員更新の都度、法務局へ「役員変更登記」を提出する必要があります。取締役が1名の場合、すなわち単独出資の場合は最長10年を設定するのが良いでしょう。
(7)創業日を決める(決算期が決まる)
会社設立日は自由に設定することができまが、あとから設立日を変更することはできません。じっくりと考えて決めましょう。法務局へ設立登記申請を提出した日が会社設立日になります。従いまして、土日祝祭日は設立日として使えません。
(参考)ソウルナンバー
ご自身の生年月日から割り出した数字を用いて相性の良い数字をみつける方法のひとつです。験を担いでみるのも一考ではないでしょうか。
(8)決算月を決める
大手企業は3月決算(事業期間は4月1日から3月末日まで) が主流ですが、決算月はどの月でも設定が可能です。中小企業の特例として消費税の免税期間の考慮もありますので税理士と相談のうえ、決算月を決めることをおすすめします。
(9)定款を作成する
さあ、ここまで準備できたらあとは覚悟を決めて定款の作成に入りましょう。定款の作成は、司法書士や行政書士、税理士へ委託して作成してもらうのが王道ですが、「会社設立freee®」をつかって、ご自身でも定款の作成と定款認証、さらに法人登記までできます。それでは会社設立freee®を用いた定款の作成方法をご紹介します。
定款情報を画面に沿って入力していきます。
・会社の名称
・会社の住所
・連絡先(携帯電話番号でも登録可能です)
・出資者、出資金額、代表取締役
・事業内容
・資本金額と1株あたりの株価(総発行株式数が自動設定されます)
・取締役会の設置有無と取締役任期
・決算期(決算月の設定)
・公告の方法
・準備する書類(個人の印鑑証明書)
・会社印(自分で準備するか委託のどちらからを選択できます)
以上が画面で登録できたら【登録手続きに進む】ボタンを押します。
(10)定款認証
さあ、ここから定款作成と、定款認証という山場に入ってまいります。引き続き、「会社設立freee®」を用いた手続きの方法をご紹介いたします。
【認証方法を選択する】
電子定款か、紙の定款のいづれかを選択します。紙による定款認証は4万円の印紙代がかかります。電子定款を選択した場合、代行手数料が5千円発生しますが、会計freee®を創業後に利用する場合は代行手数料はかかりません。会計帳簿をマネーフォワードなど他のサービスを利用を想定する場合でも会社設立freee®で電子定款が行えます。
【定款の認証を行う公証役場を決める】
つづけて、定款を受取りにいく公証役場を会社設立freee®から選択し、決定します。
【定款の内容を確認する】
先に会社設立freee®へ入力した内容に基づき、会社設立freee®は定款を自動生成しています。会社設立freee®の画面から定款をPDF形式、もしくはwORD文書形式でダウンロードすることができます。定款認証を申請する前に、定款の内容を最終確認しましょう。
【電子定款に必要なファイルをアップロードする】
会社設立freee®のアップロード指定画面に従い、以下のファイルをアップロードします。
・電子定款ファイル(先にダウンロードしたPDFもしくはWORD文書)
・印鑑証明書
・身分証明書
ここまで終わりましたら電子定款の認証手続きは完了です。定款の認証方法で「電子定款」を選択し、かつ「会計freee®」の利用を選択した場合は5千円の送金は不要ですが、別途会計freee®の申込みを行うことで認証手続きが開始されます。
【電子定款の依頼状況を確認する】
会社設立freee®の画面で依頼進捗状況を確認することができます。(下図)
(注意)
先に「定款認証方法」で「電子定款」を選択し、かつ「会計freee®」を選択した場合、上の画面記載のとおり送金は不要ですが、会計freee®への申込みが行われない場合は、処理が進みません。2019年時点の「会社設立freee®」から会計freee®申込みへの連動機能はなく、数日処理を無駄にした経験がありましたのでご注意ください。
電子定款認証が完了すると「会社設立freee®」画面には以下のようなメッセージが表示されます。
【公証役場で認証手続きを行う】
上記処理で電子定款に必要な準備が整いましたので、「会社設立freee®」の画面に従い、公証役場での認証手続きに進みます。公証役場への持参物などは丁寧に会社設立freee®の画面に掲載されていますので参考にしましょう。
公証役場へ出向き、定款認証一式を受取りましたら出資金を振り込みましょう。
(11)出資金を振り込む
定款の認証を受けた後に、出資金を自分の口座へ振り込みます。出資者が複数いる場合は、出資者全員が行います。入金完了後、「会社設立freee®」の画面を参考にして振込先の個人口座の預金通帳のコピーをとります。
(12)登記書類を作成する
さあ、あとは法務局へ提出すべき登記書類一式を準備しましょう。登記書類一式は「会社設立freee®」から作成できます。印刷したら、会社設立freee®の画面に掲載されている「まとめ方」のリンク先に掲載されている「設立登記書類の綴じ方ガイド」を参考に袋とじ製本します。
会社設立freee®・設立登記書類の綴じ方ガイド
https://k.secure.freee.co.jp/pdfs/registration_guide.pdf
これで法人登記の準備ができました。「会社設立freee®」のサービスを活用することで、あなたご自身でも株式会社の設立準備ができます。設立準備作業を税理士に一任することも可能です。しかし、自ら準備を進めることで創業後に注意すべきポイントも理解できるのではないでしょうか。
次回は、ついに法人設立です。
※当社Tide ONE株式会社は、定款作成から法人登記までを「会社設立freee®」を用いて実現いたしました。当該サービスはfreee株式会社が無料で提供するWebサービスです。
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